栄養士の北村早苗といいます。
学校給食の受託会社で11年、小学校と保育園の献立を作っていました。

その私が、自分の家の平日の夜には、まともに野菜を出せていません。

19時前に帰ってきて、洗濯物をたたみながら、腹を空かせた中2と小5に急かされる。
そこからほうれん草を茹でて、絞って、切って、和える。
できるけれど、やらない日のほうが多いです。

献立を作る側にいた人間が言うのもなんですが、「1日350g」は平日の夜だけを切り取ると、なかなか無茶な要求です。
この記事では気合いの話ではなく、公的な調査データと食品成分表の実測値を見ながら考えます。

「時間がない」は言い訳ではなく、統計に出ている

まず、自分だけの問題ではないことを確認させてください。

カゴメが2026年6月に全国の15〜69歳4,680人を対象に行った野菜定点調査2026では、野菜が摂れない理由の1位が「調理時間がない」で24.3%、2位が「調理が面倒」で20.8%でした。
野菜が「好き」「やや好き」と答えた人は71.1%います。

嫌いだから食べていないのではありません。
好きなのに、手が回っていないのです。

厚生労働省の令和6年 国民健康・栄養調査結果の概要によると、20歳以上の野菜摂取量の平均値は258.7gで、目標の350gには90gほど足りていません。
このうち緑黄色野菜は80.2gです。

年代別に見ると、もっと露骨でした。
野菜を350g以上とれている人の割合は、30代女性で11.8%、40代女性で12.2%。
8人に1人しかいない計算になります。

子育て中の世代が、いちばん食べられていません。
意志の弱さというより、時間配分の問題だと思います。

茹でるのをやめても、緑黄色野菜の栄養はそれほど減らない

「どうせちゃんと作れないなら意味がない」と感じている方にこそ、文部科学省の日本食品標準成分表(八訂)増補2023年の数字を見てほしいのです。

可食部100gあたりの実測値に、調理による重量変化を加味して計算すると、ブロッコリーはこうなります。

調理法ビタミンCの残存率
ゆでる約44%
電子レンジ調理約91%

鍋で茹でるとビタミンCは半分以下になり、ラップをかけてレンジに入れただけのほうが9割方残ります。

手をかけたほうが栄養が残る、とは限りません。

もう一つ知っておいてほしいのが、β-カロテンの丈夫さです。
そもそも緑黄色野菜は、可食部100gあたりのβ-カロテン当量が600μg以上という基準で選ばれた野菜のこと。
その看板成分は、加熱にかなり強くできています。

同じ成分表で計算すると、ほうれん草のβ-カロテンはゆでても約90%残り、油で炒めると100%を超えます。
水分が抜けて濃縮されるためです。

カット野菜も同じでした。
にんじん(皮なし)のβ-カロテン当量は、生が7,600μgで、洗浄済みのカット品が8,100μg。
ほとんど変わりません。

「カット野菜は栄養がない」という話をよく聞きますが、緑黄色野菜の主役であるβ-カロテンに関しては、そこまで気にしなくていい数字です。
落ちるのは水に溶けるビタミンCや葉酸で、そこは果物や別の一品で補えば済みます。

切る時間は「捻出」するのではなく「移動」させる

平日の夜、野菜を切る時間はどこから捻出するのか。

11年やってみて出した私の答えは、捻出しない、です。
19時台という一番余裕のない時間帯から、切る工程そのものを追い出しました。

  • 週末の買い物直後に、にんじんとブロッコリーだけ切って冷凍しておく
  • 葉物はキッチンバサミで直接鍋に入れる(まな板と包丁を洗わなくて済む)
  • 加熱はレンジを第一候補にする。栄養面でも不利になりにくい
  • 冷凍のほうれん草やブロッコリーを常備し、切る工程ごと買う

平日の夜にやることを「盛る」と「温める」の2つに減らすのが目的です。
洗い物が減ると、翌日の自分がだいぶ楽になります。

足りない日は粉末の青汁を1杯足すこともありますが、食事の代わりではなく穴埋めとして使っています。

なお、β-カロテン以外の栄養素がそれぞれ体の中で何をしているのかは、緑黄色野菜の栄養成分と働きを整理した記事にまとまっているので、気になる方はそちらもどうぞ。

まとめ

平日の夜に野菜を切る時間は、探しても出てきません。
私も11年探して、見つかりませんでした。

ただ、成分表を見る限り、丁寧に茹でることが常に正解とも限りません。
レンジで加熱したブロッコリーのほうがビタミンCは残りますし、緑黄色野菜のβ-カロテンは多少雑に扱っても平気な顔をしています。

切る工程を週末に寄せる。
まな板を出さない方法を選ぶ。
冷凍やカット済みを堂々と使う。

その程度のことで、今日の夕食に緑の一皿が増えるなら、私はそれで十分だと思っています。

最終更新日 2026年9月3日