こんにちは、ファッションライターの真柴蓮です。
古着屋とセレクトショップで8年ほど販売員をしたあと、いまはアジアのストリートブランドを中心に取材しています。

そんな僕ですが、販売員を辞めて間もないころ、海外ブランドの偽物を自分で買ってしまったことがあります。
服を見る目には多少の自信があったので、届いた箱を開けたときのショックはかなり大きかったです。

この記事では、そのときの失敗と、そこから学んだ「正規店で買うための確かめ方」をまとめました。
海外ブランドを通販で買おうとしている方が、同じ後悔をしないための材料になればうれしいです。

僕が偽物をつかまされたときのこと

まずは恥ずかしい話から始めます。
数年前の冬のことでした。

SNS広告から数分で注文していた

夜中にスマホでSNSを眺めていると、前から欲しかった海外ブランドのパーカーの広告が流れてきました。
定価のおよそ6割引きで、「在庫残りわずか」の表示も出ていました。

日本では完売していたモデルだったこともあり、深く考えずにリンクを開きました。
サイトの見た目は公式とよく似ていて、支払いは代金引換を選びました。
カード番号を入れずに済むので安全だろう、と思っていたのです。

いま振り返ると、広告を見てから注文確定まで、5分もかかっていなかったと思います。

届いた箱を開けて分かった違和感

10日ほどして届いたのは、薄いビニール袋に入ったパーカーでした。
袋から出した瞬間、手触りで「これは違う」と分かりました。

  • ボディの生地が薄く、裏起毛がすぐに毛玉になりそうだった
  • 胸のロゴ刺繍の糸が粗く、文字の端がほつれていた
  • 首元のブランドタグのフォントが、手持ちの正規品と微妙に違っていた

サイトに書かれていた問い合わせ先にメールを送りましたが、返事は来ませんでした。
代引きで払ってしまったので、お金を取り戻す手段もありません。

販売員時代、偽物を見分けるコツをお客さんに話していた自分がこれか、と本当に落ち込みました。

偽物トラブルはいまも増えている

自分だけの不注意だと思っていましたが、調べてみると同じような被害はかなり多いことが分かりました。

税関で止められる偽物の3割は衣類

財務省の発表によると、2025年に税関で輸入を差し止めた知的財産侵害物品は31,760件でした。
品目別の件数では衣類がいちばん多く、全体の30.0%を占めています。

項目2025年の数字
輸入差止件数31,760件
品目別で最多衣類 10,660件(30.0%)
2位バッグ類 7,560件(21.3%)
仕出国で最多中国 26,292件(82.8%)
輸送形態郵便物が86.5%

郵便物が9割近くを占めているのは、通販で買った商品が小包で届くケースが多いからだと考えられます。
詳しい内訳は財務省「令和7年の税関における知的財産侵害物品の差止状況(詳細)」で確認できます。

国民生活センターに寄せられた、ネット通販の「偽物」に関する相談も増えています。
2017年度は2,127件でしたが、2022年度は4,052件と約2倍です。

注目したいのは支払い方法です。
相談のうち代引き配達が絡むものの割合は、2017年度の9.5%から2022年度には59.3%まで上がりました。
僕のように「代引きなら安心」と考えて被害に遭う人が多いということです。
詳しくは国民生活センターの注意喚起ページにまとまっています。

2022年10月から「個人で使うだけ」は通らなくなった

もうひとつ知っておいてほしいのが、法律の変化です。

以前は、偽物であっても個人で使う目的なら受け取れる場合がありました。
僕のパーカーが手元に届いたのも、この改正の前だったからです。
しかし商標法・意匠法・関税法の改正が2022年10月1日に施行され、海外の事業者から送られてくる模倣品は、個人使用目的でも税関で没収の対象になりました。

税関の案内では、国内の通販サイトで買った場合でも商品が海外から直接送られてくることがあると注意を促しています。
さらに、購入代金の返金には税関は対応しないとはっきり書かれています。
つまり偽物を注文すると、商品は没収され、お金も戻らない可能性が高いのです。

制度の説明は税関「模倣品の水際取締り強化!」が分かりやすいです。

偽サイトに共通するサイン

僕が注文したサイトにも、いま思えば怪しいところがいくつもありました。
警察庁や国民生活センターが挙げている偽サイトの特徴と照らし合わせると、ほとんど当てはまっていたのです。

  • 通常では考えにくいほど大きく値引きしている
  • 「品薄」「本日限り」などの表示で購入を急がせる
  • 日本語の字体や言い回しが不自然
  • 会社名・住所・電話番号がない、または無関係の住所が書かれている
  • 問い合わせ先がフリーメールになっている
  • 支払い方法が銀行振込や代引きだけなど、限られている
  • 返品やキャンセルのルールがどこにも書かれていない

あとからサイトを見返すと、会社概要のページには住所が番地まで書かれておらず、電話番号もありませんでした。
「在庫残りわずか」の表示は、何日たっても同じままでした。
注文前に1分でも会社概要を開いていれば、気づけたはずです。

警察庁の偽ショッピングサイト・詐欺サイト対策のページでは、検索結果の上位やSNS広告に偽サイトが出てくることもあると注意しています。
広告に出てきたから大丈夫、とは考えないほうがいいです。

ただ、国民生活センターは、これらに当てはまらなくても偽物が届く場合があるとも伝えています。
チェックリストはあくまで入口で、最後は販売元そのものを確かめる必要があります。

正規店かどうかを確かめる手順

失敗してから、僕は海外ブランドを買う前に必ず次の手順を踏むようになりました。

確かめること見る場所
ブランドが案内している販売先かブランド公式サイト、公式SNSのプロフィールや投稿
運営会社が実在するか「特定商取引法に基づく表記」の会社名・住所・電話番号
URLが正しいか公式のURLと1文字ずつ見比べる
返品・配送のルール利用規約、配送ポリシー、FAQ
支払い方法クレジットカード以外に選択肢があるか、前払いだけでないか

公式から販売先をたどる

いちばん確実なのは、ブランド側から販売先をたどることです。
公式サイトや公式SNSで「どこで買えるか」を案内していることが多いので、そこから飛んだ先で買えば、偽サイトに迷い込むことはまずありません。

広告や検索結果から入ったときは、一度ブラウザを閉じて、ブランド名で公式サイトを探し直すようにしています。
少し面倒ですが、あの晩の5分間の注文を思い出すと、この手間は惜しくありません。

「正規品」の表記だけで安心しない

偽サイトも「正規品保証」とうたうので、表記だけでは判断できません。
僕が見るのは、利用規約や配送ポリシーにきちんと不利な条件まで書かれているかどうかです。

本物のお店ほど、返品できない条件や配送にかかる日数を細かく書いています。
逆に、いい話しか書いていないサイトは、それだけで警戒するようにしています。

並行輸入品と偽物は別のもの

よく聞かれるのが「並行輸入品は偽物なのか」という質問です。
並行輸入品は、正規代理店を通さずに海外で正規に流通している本物を仕入れたものです。
偽物は、ブランドの許可なくロゴや商標を付けて作られたものなので、まったく別の話になります。

税関も、ブランド側が正規に商標を付けた本物を輸入する場合は、一定の条件を満たせば商標権の侵害にならないという考え方で扱っています。
ただ、並行輸入をうたう店の中に偽物を混ぜて売る業者がいるのも事実です。
並行輸入品を買うときこそ、運営会社や返品ルールを丁寧に確認するようにしています。

正規ルートで買ったHBSで気づいたこと

最近、正規ルートで買った海外ブランドに、ベトナム・ハノイ発の「HBS」があります。
ダークウェアやテックウェアの文脈で語られることが多いブランドで、僕の取材テーマとも重なります。

まずHBSの公式サイトを見てみると、写真で世界観を見せるルックブック中心のつくりで、購入はFacebookのメッセンジャーで問い合わせる形になっていました。
英語でのやり取りに不安があったので、日本語で手続きできる販売先を探すことにしました。

日本からは、アジアのブランドを扱うオンラインストア「60%(シックスティーパーセント)」で購入しました。
60%では「ハノイボーイズスワッグ」の名前で紹介されていて、「ベトナム・ハノイ発のハイエンドストリートウェアブランド」と説明されています。

買う前に、60%の規約やポリシーにも目を通しました。

  • 運営会社は日本法人で、特定商取引法に基づく表記に東京の住所と電話番号がある
  • 商品は海外から発送され、届くまで営業日で4日から20日程度かかる
  • 関税・輸入税は商品価格に含まれている
  • 自己都合の返品・交換は受け付けていない
  • 利用規約では、取引はユーザーと出店者の直接取引と定められている

返品できない点や、自分が輸入者になる点まで書かれているのを見て、かえって信用できると感じました。
自己都合の返品ができない分、サイズ表は手持ちのパンツと見比べてから注文しています。

届いたパンツは、ステッチの間隔がそろっていて、ジッパーまわりの作りもしっかりしていました。
偽物のパーカーを手にしたときの、あのがっかりした感覚はまったくありません。

HBSがどんなブランドで、なぜハイエンドと言われるのかについては、ハノイ発HBSのハイエンドなデザインを掘り下げた記事が参考になります。

もし偽物を買ってしまったら

最後に、万が一買ってしまったときの動き方も書いておきます。
僕は当時これを知らず、何もできませんでした。

  • クレジットカードで払った場合は、すぐにカード会社へ連絡して支払いの停止を相談する
  • サイトのURLや画面、注文確認メール、やり取りの記録を保存しておく
  • 消費者ホットライン「188」で、最寄りの消費生活センターに相談する
  • 詐欺の疑いが強い場合は、警察のサイバー犯罪相談窓口にも相談する

海外から届くはずの商品について、税関から通知書が届くこともあります。
これは輸入しようとした品物が模倣品の疑いで止められたという知らせで、侵害品と認められれば没収されます。
先に書いたとおり代金の返金は税関の担当外なので、購入したサイトやカード会社に連絡することになります。
通知が届いた時点で、注文の記録を手元にそろえておきましょう。

フリマアプリで買った場合は、アプリごとの補償制度を確かめてください。
たとえばメルカリには、本人確認やメルカリ便の利用などの条件を満たした取引を対象にした全額補償の仕組みがあります。
申請には期限があるので、届いたらすぐに中身を確認する習慣をつけておくと安心です。

まとめ

偽物をつかまされた経験は、いまでも思い出すと苦い気持ちになります。
ただ、あの失敗があったからこそ、買う前に販売元を確かめる習慣が身につきました。

  • 衣類は税関で止められる偽物の中でもっとも多い品目
  • 2022年10月から、海外から届く模倣品は個人使用でも没収の対象
  • 大幅値引き、急がせる表示、限られた支払い方法は偽サイトのサイン
  • 公式から販売先をたどり、規約や配送ポリシーまで読んでから買う

安さや「残りわずか」の表示に気持ちが動いたときほど、一度手を止めてみてください。
正規店で買った服は、袋を開けた瞬間から気分が違います。
長く着られる一着を、安心できる場所で選んでほしいと思います。

最終更新日 2026年10月29日